よく当たる占い

というのがありますが、昨晩、とある某占い番組を眺めていて、素人ながら感心してしまい、久々に色々書いてみようかと思う。

まず、私自身は、如何なる超常現象も、とりあえず片っ端から疑って掛かる性質の人間なので、占い等に強い興味を抱いている方は、この先は読まない方が宜しいかもです。
(精神的にも時間利益的にも)

私が見た番組というのは、どうも「あの世」というものと、前世や、死者の言葉を現世とチャネリングして利用し、対象を占うという物のようでした。

まずここで、

「あの世」という別の世界が存在するものと規定し、そこには前世の霊やなんかが住んでおり、占い師はその死者とコンタクトし聞きだせる。

こういった能力を提示する事で、この後の行動に深みが出てきます。前置きの伏線ですかね。

まず、コールドリーディングとホットリーディングというものが有ります。
凄く解りやすく解説しているサイトを見つけたので張り。
●「黙って座ればピタリと当たる」

要するに、コールドリーディングというのは、対象の人種や外見等の、一見してわかる特徴を元に、推論する方法であり、それに対し、ホットリーディングとは、事前調査によってある程度の情報をストックしておく手法です。
ぶっちゃけ、この二つだけでも、占い師の「真似事」をするには十分ですね。

まずはコールドリーディングをジャブのようにいくつか打ってみて、ヒットしたものを溜めつつ、ホットリーディングで調べておいた情報と掛け合わせ、話を展開していく。
このとき、ズバズバと直球で突いてしまっては、逆に、事前に何らかの情報があったのではないかと疑われます。
そこで効果的なのは、適度にマルチプルアウトというテクニックを織り交ぜる事。
これは、あのノストラダムスの予言書風味に、「考えようによってはどうとでも取れるような曖昧な表現」の事です。

既にコールドリーディングとホットリーディングの段階でいくつか当てていることで、対象の心理に隙が生まれています。
そこへさらにマルチプルアウトで畳み掛けて言葉を滑り込ませてみますと、大抵は、占い師にとって好意的な方向へ解釈しようと考え始めるのです。
もう、この段階まで来てしまったら、あとは対象自身が色々と情報を漏らし始めているので、それをまた、リーディングの材料にして、占いを進行させていけばよろしいという。

そして、最後に、レトロフィッティングという、いわゆる「こじつけ」技術がありますね。

「あなたの後ろに、何か…滝?…いや、水のようなものが無数に漂っています。」

何か直感的な心当たりがあれば、対象者本人が関連付けて語りだすでしょうし、全く何も浮かんでそうになければ、何か心当たりは有りませんか?と攻めつつ、別の話題を進行させます。
しかし、水というだけでは、あまりに幅が広いので、後からどうとでも関連付けられてしまいます。
それでもやっぱり、使い所によっては、効果的に相手を引き寄せられるテクニックと言えるでしょう。
そしてこの時、最初に規定した、あの世の存在や、霊の存在を再度ちらつかせ、こうなのです、ああなのですと、心が「信」に偏ってる中で、こういった超常現象をちょろっと出されても、疑念が湧くどころか、むしろ、それ自体が裏付けになってしまい、霊の言葉が、前世が見える/聞けるからここまで当てられるんだ。等と思い始めてしまうと思います。

基本的には占いというものはこういった話術や、心理誘導の技術で成り立っている物で、如何にしてその能力を使い、対象者の心に救いや、自己整理を起こさせられるかが、占い師の腕の見せ所だと思います。

で、一体、番組のどこに感心したかといいますと、やはり、その巧みさです。
上記のようなテクニックを知った所で、一筋縄にはいかないのが占いの難しい所で、
実際にはやはり、センスが肝心です。各テクニックをどのポイントで使うか、
どの程度までならば同じテクニックを出しても怪しまれないか…。
唐突すぎず、遅すぎず。
こればっかりはやっぱり流石にプロですよね。
当然、テクニックを難なく使いこなせて応用が利かせられるだけの語学力や、話術にも長けていなければ、すぐに底は見えてしまいます。

しかし、その番組の対象者は実に美しく、微妙に微妙に、ジリジリと心の歯車を狂わせられていき、
その狂った歯車にピッタリと占い師の歯車がピタリとかみ合って、廻り始めていました。

その過程を、私は非常に芸術的だと感じたんです。