対話

「君は何故ここへ来たんだい?」

君なら知っているんじゃないのかな。

「そうだね。僕は君の事なら何でも知っているはずだ」

何でも?

「うん」

そんなはずがあるもんか、
だって君は、世の中の全ての人を抱えているじゃないか。

「だから君の事も見つけられた」

けど、君は僕の事を全て知っている訳じゃない。

「…いいかな?」

何?

「僕の形は様々で、僕自身は世の中全ての人の中に居るけれど、
 君の中に居る僕の形は、僕一人のものなんだよ」

つまり僕の中に居る君は、全であり、個であると?

「そういうこと」

でも、そうすると、君の形を理解できるのは僕だけにならないかな。

「それは、自分でも今言ったばかりじゃないか。
 僕は個ではあるけれど、等しく元の形を常に内包しているんだよ」

「いくら形が変わったとしても、僕本来が持つ基礎構造だけは変わらない」

なるほど。
それなら、皆に通じる事が出来るかもしれないね。

「通じるといいな」
 通じるといいね